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横谷 明徳; 宇佐美 徳子*; 小林 克己*
Photon Factory News, 10(1), p.13 - 14, 1992/05
軟X線領域には、生体構成元素の内殻吸収端に起因する生体分子の吸収スペクトルがある。吸収端前後の吸収断面積の差を利用して、生物細胞内部の特定元素を「狙い撃ち」することが可能であり、これにより放射線のエネルギーを吸収した分子の化学変化(損傷)に対する細胞の応答(修復)のメカニズムを調べることができる。実際に遺伝子、DNA、中のリン原子をK殻励起すると、致死効果や遺伝的変化の誘発が効率よく起こることが知られている。そこで、次の段階として、内殻電離、励起に伴うこのような効果の原因となる特異的な分子変化が果して起きているかどうかを、アミノ酸をモデル物質として調べた。含硫アミノ酸中のイオウをK殻励起し、分解生成物のスペクトルを測定した。励起光源としてシンクロトロン放射を用いた。その結果、イオウの励起の有無で生成物分布が大きく異なることが明らかになった。これは、内殻励起特異的な生体分子変化であると考えられる。
横谷 明徳; 小林 克己*; 宇佐美 徳子*
Photon Factory Activity Report, P. 299, 1992/00
乾燥状態(粉末)のイオウを含むアミノ酸に対する、単色シンクロトロン軟X線の照射効果がこれまで調べられてきた。その結果、イオウのK殻励起を起こした場合とそうでない場合とで、分解生成物のスペクトルが変わることが明らかになった。本研究では、より生体に近い条件下でも、このような変化が起きるかどうかを調べることを目的とし、まず水溶液試料中に生成する分解生成物を検出することを試みた。試いたアミノ酸はシスタチオニンで、分子中にひとつのイオウ原子を含む。照射に用いたエネルギーとして、イオウK殻共鳴吸収ピーク(2473eV)をシンクロトロン放射を分光して得た。生成物は高速液体クロマトグラフィーを用いて、分離定量した。その結果、固体試料の場合とは異なる生成物スペクトルが得られた。同定された生成物のうち、OH基を持つものがあったことから、水中に生じたラジカルとの反応があることが示唆された。